2011-07-11から1日間の記事一覧

46.復活・昼間の渡し

徳川家康が荒川を渡ろうとしたとき、村人総出でかがり火を焚き、昼間のように明るかったので「昼間」の名字が授けられたという。昭和になってから、渡しは長らく途絶えていたが、二〇〇七年、地域住民の手により渡し場が復活した。 昔の風景が次々と姿を消す…

47.時の鐘の春化粧

「岩槻に過ぎたるものが二つあり、児玉南柯と時の鐘」と詠われた時の鐘が、早咲きの桜の花の香りに包まれ、音色もひときわ冴え渡りそうだ。 江戸幕府が上野、川越とここ岩槻のものを特に優れた「時の鐘」として認めていたほど、この鐘は音色が特に優れ、四里…

48.春近し、岩槻遷喬館

遷喬館は岩槻藩に仕えていた儒者、児玉南柯が一七九九年(寛政十一)、裏小路(現岩槻区役所の裏を東西に走る小路)に開いた家塾。のち藩校となる。県内で当時の姿のままで保存されている藩校はここだけで、一九三九年(昭和十四)、県の史跡に指定された。 …

49.旧中山道、鳥居のない調神社入り口

地元では「つきのみやじんじゃ」と呼ばれ親しまれているが、正式名称は「調神社」(つきじんじゃ)である。鳥居のない神社、うさぎのいる神社として有名。 中山道浦和宿手前の岸村にあり、江戸から蕨宿を経て、浦和宿への入口を示す神社であっただろう。 map…

50.朝日に輝く氷川女体社の初詣

三室にある氷川女体神社は、自然暦に基づいた古代的な信仰形態が窺われるロケーションが魅力的だ。見沼に突き出した台地の端にあって、初日の出は参道の延長上にある祭祀場跡の方向から上ってきて、普段は小暗い神殿を明るく照らし出す。 古代の信仰に思いを…

51.風渡野郷、大円寺と高層マンションの対比

大円寺は明治初期に風渡野学校が置かれた由緒あるお寺だが、その周辺は次々と開発されて緑も減少した。突然出現した十五階のマンションは、見沼区で一番の高層建築物である。 大円園寺の正面に立てば、本堂の左奥に十五階建てマンション、右手前の庭園には十…

52.タイムスリップする薬王寺

薬王寺は江戸時代の島村にあって眼病に霊験があるとされ、足立坂東第十番札所として信仰をあつめてきた。かつて祭礼日には寺をめざす人々が行き交い、川越道、岩槻道に露店が連なり大いに賑わったという。 現在の薬師堂は一九三五年(昭和十)の再建だが、屋…

53.さいたま市の北の入口、加茂神社

加茂宮村の名前にもなっている古い神社で、英泉は「木曽街道上尾宿加茂之社」として、加茂神社と茶屋の絵を描いている。 マンションに囲まれてはいるが、今も中山道脇にこんもりとした森をつくっており、道行く人の目印になっている。さしずめ、さいたま市の…

54.近代土木遺産、千貫樋水門

荒川からの洪水が堤内の農地に逆流するのを防止するため、鴨川最下流部に設けられた一九〇四年(明治三七)年完成の煉瓦水門。 現在は水門としての役目を終え、荒川の旧堤防であった県道五七号の道路橋として、水路周辺の公園の一角にひっそりと佇んでいる。…

55.大宮氷川神社の夏祭り

盛夏の訪れを感じる大宮氷川神社の例大祭。 八月二日に行われる橋上祭は、神様を橋の上でおもてなしする神事で、召人に選ばれ黄色の水干を着た一般市民の姿に、神社境内は平安時代の風景になる。 山車や神輿も楽しいが、伝統ある祭事を見て古代からの信仰に…

56.歳の市の賑わい

さいたま市の年末は歳の市で彩られる。さまざまな食べ物の夜店、熊手やダルマを売る店がひしめくように並び、境内もまちも普段とまったく違った風景になる。デジタル時代の若者たちが、大勢繰り出してくるのも不思議だ。 十二月十日が大宮氷川神社の十日市(…

57.昔の面影を残す秋葉神社の祭り

四月と十二月の十八日は、火盗除けで有名な秋葉神社の例大祭。農具や包丁などが並ぶ鍛冶屋、活きた鯉を捌く露店などには遠く県北からも多くの人が訪れる。 神社の御利益もさることながら、これだけの懐かしい露店が並べば、自ずと人は吸い寄せられるような気…

58.久伊豆神社の黒奴おどり

岩槻の総鎮守、久伊豆神社の黒奴が五十四年ぶりに復活し、二〇〇八年秋の例大祭において奉納された。江戸時代、岩槻の黒奴は日光の赤奴、甲府の白奴とともに日本三大奴と称され、久伊豆神社の由緒ある神事として十年ごとに盛大に行われていた。 岩槻が徳川親…

59.ささら獅子舞の風景

南部領辻の見沼代用水東縁沿いに小さな鎮守の森がある。そこに鎮座する鷲神社では毎年五月と十月、ささら獅子舞が奉納される。 「ささら」がリズムを刻み笛の音が響き、天狗の前で龍の頭の獅子三頭が勇壮に舞い、この時ばかりは木立の中がハレの舞台に変わる…

60.慈恩寺・玄奘祭・稚児行列

岩槻、元荒川の北にある名刹慈恩寺では、毎年五月五日こどもの日に玄奘祭が行われる。慈恩寺から田んぼを隔てた十三重の塔までの約一キロメートルを、孫悟空に扮した可愛い子供たちが模造の白馬とともに練り歩く。 境内において、大人の扮した猪八戒、沙悟浄…

61.岩槻の流し雛、まちかど雛めぐり、人形供養祭

春まだ浅き頃、城下の古民家に飾られた古いお雛様、店先に並べられた新しいお雛様を見て回る「まちかど雛めぐり」、新緑に囲まれた岩槻城址公園の菖蒲池で子供たちの健康、幸せを祈って行われる「流し雛」、そして、銀杏が黄金色に染まる頃、公園傍の人形塚…

62.蔵のまちコンサート

与野本町通りの蔵の前庭を利用した「蔵のまちコンサート」。普段はあまり人だまりを見ない通りに、この日は五百人もの住民が集まる。 中央区区民会議のまちづくり推進のアイデアから生まれ、区民、商店会と行政の協働で毎年秋に開催、今では住民の間に定着し…

63.けやき広場の紅葉に映えるスーパーアリーナ

十二月八日はジョンレノンの命日。さいたま新都心けやきひろばでは、この十年来その命日を偲んで、埼玉のミュージシャンによる「Love&Peaceコンサート」が開かれている。 スーパーアリーナの幾何学的な造形の前で、けやきひろばの欅が、少し季節は遅いが見…

64.アートフルゆめ(希望)まつり

桜が咲き始める三月末、大宮のまちのいたる所にアートの花が咲く。ジャズ、吹奏楽、バンド、アカペラ、僧侶の声明、民族音楽に、似顔絵、水彩画。 二〇〇八年に始まった「アートフルゆめまつり」は、市民が企画し市民が運営している市民のまつり。色彩豊かな…

65.Jリーグの興奮

真っ赤なサポーターで埋まる埼玉スタジアム二〇〇二、オレンジに染まるNACK5スタジアム大宮。シーズン中はほぼ毎週どちらかで試合が行われる。数万人の観客を収容するスタジアムは、興奮のるつぼと化す。 サッカー観戦は単なるスポーツ観戦ではない。人々の…

66.見沼田圃に浮かぶ新都心

見沼田圃の広がりと芝川、そこを走り抜ける高速道路とその先の新都心。農地から街そのものを遠望するという視点も面白く、地域の骨格をなす要素が織りなす、ダイナミックでさいたま市らしい風景である。 巨大な街のシンボリックな容貌を絵のように実感できる…

67.綾瀬川の川面に抱かれる埼玉スタジアム

綾瀬川は緑区高畑と岩槻区笹久保新田との境界線で大きく蛇行して流れる。その馬蹄形に輝く川面に抱かれるようにして、両翼を広げた巨大な埼玉スタジアムが出現する。 スタジアムの裏側の笹久保新田は静かな農村地帯だが、サッカーの開催となれば、地鳴りのよ…

68.与野本町駅から望む芸術劇場と富士山

埼京線与野本町駅のプラットフォームから西を望むと、富士山を背景に彩の国さいたま芸術劇場のタワーが立ち上がり、さいたま独自の芸術発信の地がここにあることをアピールしている。 手前の電線がいかにも邪魔だが、これも日本の風景の現実だ。 map:x139.62…

69.電波塔・平野原送信所

荒川に近い桜区道場の水田地帯に立地するこの電波塔は、騒がしいトラス構造とは異なるロケットのようなスリムな形態で、高さ百七十三メートルの割に目立たない。支柱から下のシャープなデザインも近くでないとわからない。 ロケット型のデザインの電波塔は、…

70.台地際のランドマーク、東京瓦斯浦和整圧所

本杢(ほんもく)古墳は大宮台地の西縁から低地を見下ろす位置にある。その脇の急な坂道から見ると、住宅の隙間からガスタンクと首都高が見える。 一九九八年に高速埼玉大宮線ができる以前は、秋冬の夕方、木々の枝間から富士山が見通せ、ガスタンクと遠近の…